森林作業の安全④ チェーンソー防護ズボンの機能、手入れ、耐用年数

鎧とスポーツウエアのバランス

チェーンソー防護ズボンは、もっとも危険な職業の一つに挙げられる森林作業で、作業士を怪我や事故から守るな主要な装備です。

防護ズボンには、チェーンソーの刃が当たる確率が多い場所である足の前面から左後ろにかけて、切断防止繊維層が埋め込まれています。回転するチェーンがズボンに当たった際、繊維層がチェーンに絡みつき、チェーンの回転を止め、足が傷つくのを防ぎます。

チェーンソー防護ズボンの切断防止繊維層の面(タイプA)

防護ズボンの切断防止機能には、ISO 11393(国際標準化規格)、EN 381-5(欧州規格)、JIS T 8125(日本工業規格)などがありますが、欧州規格においては、下記の4段階が定められています。

  • クラス1 20m/秒
  • クラス2    24m/秒
  • クラス3    28m/秒
  • クラス4  32m/秒

大半のチェーンソー防護ズボンは、クラス1です。その理由は、切断防止性能を高めると、繊維層が分厚く重くなり、快適さ、動きやすさを妨げてしまうからです。「鎧」の機能と「スポーツウエア」の機能のバランスを求めてのものです。ズボンの快適性や軽量さも、切断防止性能と同様に、安全性の重要な要素です。重く動きにくい防護ズボンは、作業士の瞬時の動きを鈍らせ、疲れや集中力不足を促進させ、怪我や事故の原因になります。

プロのズボンは、定期的な洗濯を! 

切断防止性能は、作業環境や頻度、時間などの要因によって劣化が起こります。

まず「汚れ」は劣化の大きな原因です。チェーンソー油や木の脂(ヤニ)は、切断防止繊維に腐食ダメージを与え劣化させますので、汚れたチェーンソー防護ズボンは、頻繁に洗濯することが勧められています。

毎日使用するプロの森林作業士は、通常2週間から3週間に一度、ズボンを洗濯しています。洗濯の際は、メーカーが指定する方法を厳守することが重要です。多くの場合、洗濯水の水温は30~60度が指定されています。柔軟材は、切断防止繊維にダメージを与えてしまうので、使用することは勧められません。洗濯機の脱水機能の使用は控えるべきです。高速回転させることで、切断防止繊維層が偏ったり形状が変化したりする恐れがあるからです。また乾燥は、屋外、屋内に干して自然に行うことが重要です。乾燥機による機械乾燥は繊維にダメージが与えられます。

「洗濯によって、切断防止性能の劣化が起こるので、頻繁に洗わないほうがいい」という意見も以前ありましたが、ここ数年の研究機関(Rottenburg林業大学校など)の試験によって、25回の洗濯のあとも、大きな性能の劣化はない、という結果がでてきます。洗濯によって切断防止繊維が若干収縮するので、返って切断防止性能が高くなる、という結果もでています。ただし、繊維層が収縮する分、カバーする防護面積が少なくなり、それだけ防護機能が減少するということも言えます。収縮率は、ズボンや繊維層の種類によりますが、50回の洗濯(脱水なし)で、5-13%程度です

耐用年数は、プロ1~1.5年、アマチュアは5年

チェーンソー防護ズボンの耐用年数は、製品の種類や品質により違いがありますが、毎日使用するプロの作業士のズボンであれば、目安として、20から25回の洗濯、12から18ヶ月が提示されています。年に数回しか使用しないアマチュアの防護ズボンであれば、5年間が目安です。

防護機能アウト→交換!

チェーンソーの刃がズボンに当たり、防護繊維が絡みついた場合は、それが僅かな切れ目であっても、切断防止繊維層が変形損傷し、性能が確保できなくなっていますので、そのズボンは防護ズボンとしては使えません。また枝や棘などで、ズボンの内部の切断防止繊維層に形状変化や損傷加えられた場合も、切断防止機能が確保できなくなりますので、すぐに新しいズボンに交換する必要があります。

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