森林作業の安全② 森林防護服 − 安全性と快適性の両立

昔は騎士の鎧だった

チェーンソーや落下する枝による怪我や事故から身を守るのが森林防護装備の役割ですが、初期の70年代から80年代の装備は、「騎士の鎧」のようなものでした。身体を守ってくれますが、重くてかさばるものでした。

暑苦しく、動きにくい。ヘルメットも服も靴も、現在のものより遥かに重いものでした。例えば、現在のジャケットは400〜600グラムくらいですが、当時は1キロ以上。切断防止繊維が入った防護ズボンは、分厚い12層の切断防止繊維が入ったもので、3キロ以上の重さがありました。現在の防護ズボンは、プロ仕様のものは、切断防止繊維4〜6層で、軽量の生地が使用されていて、重さは1.5キロ以下です。

高性能の生地の開発

森林防護服は、2000年代に入ってから、プロ仕様のものを中心に、高度な特性を持つ様々な生地が開発されて、それらを組み合わせて軽量で快適性と機能性の高い防護服になっていきました。

高い通気性と中の水分(汗)を外に蒸発させる性能、体のよく動かす部分にはストレッチ生地、耐摩性の優れたマテリアルで肘や膝のガード、棘や灌木があたる脛や太腿の部分に強く破れにくい生地などです。

また、デザインもかなり進化しました。以前は、地味な色の冴えないデザインのだぶだぶの防護服でしたが、それが、鮮やかな色彩、洗練されたデザインで、体にフィットするスリムカットの「カッコイイ」服になっていきました。とりわけここ10 数年の進化は著しいものがあります。

軽く、快適になったことで、安全性が向上!

以前は、安全(=切断防止機能)を与えるために、機能性や快適性を諦めなければなりませんでしたが、高性能な生地やその組み合わせ技術の進化によって、同様の安全性能を保ちつつ、機能豊かで快適な作業服をつくることができるようになりました。いや、正しく表現すると、機能性と快適性の向上によって、安全性も飛躍的に向上したと言えます。

防護ズボンの切断防止性能は、森林作業における安全の一つの重要な観点ですが、それが全てではありません。怪我や事故は、作業員が疲れたとき、汗で体が濡れて冷えて動きが鈍ったとき、集中力が低下したときに起きやすくなります。軽量で機能性と快適性の高い防護服を着て作業をするということは、疲れにくい、体が冷えにくい、集中力を保ちやすい、ということです。森林作業の安全性の向上に大きく貢献します。

また、体にしっかりフィットする形状の服は、見た目の「カッコよさ」を創出するとともに、安全上非常に重要な要素でもあります

防護ズボンは「軽い」ほど、快適性が高まり、疲れにくく、安全性が上昇しますが、ここで重要なのは、秤に乗せたときの絶対重量ではなく、「体感重量」です。体にフィットした防護ズボンは、腰から脚先の様々な部分に「重さ」が分散するので、フィットしないズボン(=肌と生地の間に隙間があるゆったり目のズボン)に比べて、着ている人は遥かに軽く感じます。例えば、1.5キロのズボンでも、形状によって、1.3キロのものより軽く感じることもあります。

 

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